文筆家の山本貴光さん、吉川浩満さんがやっているYouTubeチャンネル「哲学の劇場」というのをいつも観ているのですが、ひょんなことから先日こちらに主演しました。
吉川浩満さんと酒井泰斗さんによる「非哲学者による非哲学者のための哲学入門読書会」紹介動画にて、読書会参加者の一人としてあれことおしゃべりをしています。
とりあえずは動画の方を観ていただくとして、事前に準備しておいて話しそびれたことがいろいろあるのでここで補足をしたいと思います。
まず、動画の中で「0周目」という話をしています。この読書会では事前に課題図書を3回読むことになっているのですが、それ以前、読む前の準備段階でやっておくことがいくつかあります。
まず目次を見て、各章の分量を確認します。具体的には目次に載っているページをエクセルに入力して表やグラフにしています。
そしてまえがき・あとがきから、著者がこの本でやろうとしていること=課題を宣言している箇所を抜き出します。さらに各章ごとに同様に課題を宣言してる箇所を探します。多少なりとも学術的な本であれば、だいたいこういうのは書かれている箇所が決まっているので、読まなくてもざっとあたりをつけることは可能です。
ここまでは動画でもした話なのですが、ここで大事なのは「手を動かす」ということ。もともとぼくも「目次に目を通す」くらいのことはしておりました。それに普通に読んでいればまえがきで「この本は~する本である」とか「第1章では◯◯について解説し、それをうけて第2章ではxxを検証する」とか書いてあれば、「ああ、そういうことをするのね」ということはわかります。なんですけど、頭の中でわかってても、そのまま読んでると忘れるんですよね。そういう箇所をレジュメとして抜書きしておくことで、頭にも入るし、いつでもそこに立ち返ることができるようになります。
ここで、意外と自分にとって重要だったのが、「PDFで作業する」ということです。
この読書会ではマーキングということを行います。課題を宣言している箇所、およびその回答が書かれている箇所。そのほか「たとえば」という言葉が出てくれば、どこからどこまでが「たとえば」の範囲なのか。「第一に」「第二に」とか、「まずは」「続いて」といった言葉が出てくれば、それらが示す範囲に下線を引きます。
こういった作業は紙でやってもいいんですが、紙に蛍光ペンで線を引いちゃうとやり直しがききません。一回目に読んでマーキングした箇所でも2回、3回と読んでいくうちに間違いだとわかったり解決したりしたところは消していくことになっているので、ここはやはりデータでやりたいところです。Kindleとかでもいいんですけど、PDFだとコピペにも制限がないところがいいんですよね。
ぼくは吉川さんが出演している平山亜佐子さんのシラス番組の影響を受けてちょっとずつ自宅の蔵書のPDF化を進めてるのですが、特にこの読書会についてはPDF化の恩恵を強く感じています。クラウドで自炊PDFのフォルダを同期させておいてタブレットで本を読みながらマーキングしたりコメントを書いたりしておき、レジュメ作成などする際にはそのファイルをPCで開いて作業しています。超便利!
これまた動画の中でも話したことですが、文章を頭から通して読んでいくだけでなく、事前に構造を把握しておくという作業は編集の仕事にも役立ちました。さらに言うなら、読むだけでなく、書くときにも役立つと思います。
ちなみにぼくは読書術のたぐいは結構読んでます。そういう本でも目次をよく見ておくということは推奨されていますが、そういう本では目次から自分の興味のある部分の検討をつけて、そこだけ読むように言われてたりすることが多いんですよね。
そういうよくある読書術とはこの読書会は大きく違っていて、むしろ自分だけの前提みたいなものを持ち込まないように言われます。とにかくそこに何が書いてあるのかを虚心坦懐に読んでいく。
実のところ、何を読んでも自分の見たいものしか見えない人というのは世の中に多く、SNSなんかでも(たったの140字ですら!)ちゃんと書いてあることも見えていないとことが往々にして見られますよね。世の中を良くするためにも、「書かれていることを読む」という当たり前の読み方が世の中に普及するといいなと――というか、ぼくも身につけていきたいなと思います。
ということで、6/2(日)からは鷲田清一『哲学の使い方』を読む新シーズンが開始。今からでも大丈夫なのでどしどしご参加されることをおすすめします!
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