「リスト潰し読書」の前段として―プラトン『ゴルギアス』【169冊目】

03 Books

影響を受けやすいタイプなのである。
近藤康太郎『百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術』という本をちょっと前に読んだ。そこで「読むべき本のリスト」をつぶしていくという読書法が推奨されていたのだが、中でもそのリストとしてお薦めとされていたのが柄谷行人ほか『必読書150』。
この本自体にはまあ賛否両論あるわけなんだが、なかなかのリストであることは間違いない。そもそもぼくもリストを設定してそれを潰していくというのは嫌いではない。ということで、今年の読書目標の一つとして「『必読書150』から10冊読む」というものを立てたのが、たしか年頭だったかな?
で、そのなかにプラトンの『饗宴』があったわけなんだけど、いきなりそこに行くのはハードルが高そうなイメージがあったので、もうちょっと入門に良さそうな本を先に読もうと思っていた。
そしたら、紀伊國屋書店新宿店で斎藤哲也さん山本貴光さん吉川浩満さんという三人で開催されたイベントの際に、「はじめての哲学書としてお薦めなのは」という話題になり、吉川さんが挙げていたのが『ゴルギアス』だった。


ということでまずはそれを読むぞと思い、運良くKindle Unlimitedに光文社古典新訳文庫版があったのでとりあえずダウンロードしてあったのだが、長らくそのまま放置していたのをこのほどようやく読んだのである。

Amazon.co.jp: ゴルギアス (光文社古典新訳文庫) 電子書籍: プラトン, 中澤 務: Kindleストア
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長い長い前置きはここまで。

『ゴルギアス』はプラトンによる対話篇の中でも比較的初期のものである。
当時のアテネでは「弁論術」というものがもてはやされていた。とりあえず弁がたってうまいこと言いくるめることができれば何でも思い通りになるというような社会だったのである。
そこで弁論術の第一人者と言われていたのがゴルギアスであり、彼のもとにソクラテスが乗り込んでいく。要するにひろゆきみたいな論破王に対して、世の中そんなことでいいのかと言いにゆくわけだ。
対するはゴルギアスと二人の弟子、ポロスとカリクレス。弟子が最初に出てきてラスボスとしてゴルギアスが出てくるのかな(名前もかっこいいし)と思っていたのだがさにあらず、最初にゴルギアスが出てきてあっさりと敗北。しかしながら、後から出てくる弟子たちが適当なことを言って逃げようとすると叱りつけて対話に応じさせたりして、必ずしも悪いやつじゃない感じ。
むしろラスボス感があるのは最後に出てくるカリクレス。アテネの若手政治家なのだが、これがなんというか、弁論術を駆使して自身の欲望を成就することが正しいのだみたいなことを言うネオリベみたいな人物である。
こうした面々を相手に、真善美みたいなことを根拠として次々にソクラテスが論破していくのだが、この過程も正直屁理屈っぽい部分がかなりあるというか、むしろソクラテスこそ論破王なんじゃないかという気がしてくる(このへんについては、訳者の解説でフォローされている)。

プラトンの対話篇はとにかく普通に面白いところが良いとは、山本貴光さん吉川浩満さんの同人誌『人文的、あまりに人文的 同人版#002』における「はじめての哲学書」アンケートにて酒井泰斗さんが書いていたと思うのだが、訳文の読みやすさもあって普通にスラスラと読める。
ということで、続けて『饗宴』に臨みたい。

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『人文的、あまりに人文的 同人版#002』哲学の劇場(山本貴光+吉川浩満) | CAVA BOOKS powered by BASE
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