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いろいろと勉強したいことはある―『現代思想 2021年8月号 特集=自由意志』(179冊目)

特集は「自由意志」。精神的活動とはすべて神経を通じた電気的刺激とそれに対する反応でしかない、みたいな話が一方にあり、それに対してそもそも自由意志なるものがありうるのか、みたいな話。戸田山 和久『哲学入門』(ちくま新書)というのがこの件に関連...
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棚の中身の話が充実―平山亜佐子『あの人の調べ方ときどき書棚探訪』【178冊目】

サブタイトルに「クリエイター20人に聞く情報収集・活用術」とあるように、様々な分野で活躍する方々に調べ物のやり方をご教示いただく(場合によっては本棚を見せていただく)という本である。もともと著者がシラスでやっている番組を書籍したものだ。 著...
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身体性とローカル性―『現代詩手帖 2023年8月号』【177冊目】

23年4月に亡くなった福間健二の追悼特集号である。 ぼくはこの詩人のことは全然知らなかったのだが(まあ、そもそもぼくが知っている詩人なんてほとんどいないわけだが)、特集の一環として掲載された作品には惹かれるものがいくつかあった。特にピンポイ...
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PDCAサイクルと片付け―藤原華『片づけをプロジェクト管理してみたら汚部屋が生まれ変わった』【176冊】

noteでよく有料記事がバズっている編集者の単著である。本書自体がnoteのコンテスト受賞作ということで書籍化されたものだという。 基本的にはタイトル通り、仕事で使うプロジェクト・マネジメントの手法を「片付け」に導入するというもの。目的・完...
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掌編の積み重ねで描き出すディストピア社会―ラヴァンヤ・ラクシュミナラヤン『頂点都市』【175冊目】

インドの作家によるディストピアSF。となるとカースト制度への風刺みたいなものになるのかなと安直に考えたのだが、むしろもっと幅広く現代社会への批判であった。 インドの都市ベンガルールは「頂点都市」として徹底した能力主義に基づく階級社会が形成さ...
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現代とは常識が違うとはいえ……プラトン『饗宴』【174冊目】

先日の『ゴルギアス』に続いて読んだプラトン。こちらも光文社古典新訳文庫の中澤務訳。『ゴルギアス』同様、kindle unlimitedで読めるのでありがたい。 かつて古代ギリシャでは長椅子に寝そべって飲み食いしながら議論を交わす「シンポシュ...
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もちろん生き返る―『The Death of Superman』【173冊目】

どこかに閉じ込められていた怪物が地上に現れて、大暴れを始めるというところから始まる。破壊のみを目的とするかのごとく暴れ続ける怪物はいつしか「ドゥームズデイ」と呼ばれることになる。 ジャスティス・リーグの面々が立ち向かうがことごとくやらていく...
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書くことは多様である。だってそもそも世界は現に多様なのだから―佐々木敦『「書くこと」の哲学』【172冊め】

先日、分倍河原のマルジナリア書店で、小説家の池谷和浩さんと思考家の佐々木敦さんの対談イベントというのがあったので行ってきた。前者は佐々木さんが編集する文芸誌「ことばと」の新人賞受賞作家であり、また佐々木さんが渋谷で主宰する「ことばの学校」の...
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「全部読む」の醍醐味―『現代思想 2021年7月号 特集=和算の世界』【171冊目】

ここ3年ほど、ゲンロンカフェで年末に行われている斎藤哲也・山本貴光・吉川浩満による「人文書めった斬り!」イベントに参加している。毎月何百冊という単位で本を買う人たちがその年に出た「人文書」(ここではかなり広義)を振り返り、「大賞」を授与する...
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ジム・デロガティス『レスター・バングス 伝説のロック評論家、その言葉と生涯』【170冊目】

『あの頃ペニー・レインと』という映画がある。ロック評論家から映画監督に転身したキャメロン・クロウが音楽ライターとしての駆け出し時代のことを描いた自伝的青春映画で、ぼくは正直なところ決して好きではないのだが(色んな人を踏み台にしてきたことを美...