困った映画―『メガロポリス』

05 Movie

決して嫌いではない。

公開前から悪い評判しか入ってこない感じだったフランシス・フォード・コッポラの大作『メガロポリス』。近年はずっとワイン屋に専念していたのだが、葡萄畑を売り払って本作に注ぎ込んだ結果、できあがったのは底抜けトンデモ映画。というのがまあ世評としては定番という感じだろうか。

舞台はニューローマという架空の都市……だが、どう見てもニューヨーク。自由の女神もあるし。ソ連も存在しており、現実をモデルにしつつ、異なる世界線であることがわかる。
主人公のカエサルは「メガロン」という新素材を発明してノーベル賞を受賞。それを用いた新たな都市「メガロポリス」を建設しようとして現市長のキケローと対立している。まあ政治の分野に進出するテック大富豪みたいなことか。
さらにはカエサルを追い落とそうとする従弟がポピュリスト政治家みたいな感じで勢いを増していき、赤いキャップをかぶった暴徒に支持されてたりする。
古代ローマ貴族たち名を用いてその退廃を描くことで現代の富裕層を風刺しているってことなのだろうか。
そういう意味では大変にわかりやすい。むしろわかりやすすぎて深みに欠けるきらいするある。

ところが映画を実際に見ていくと、そこで何が起きてるのか全然わからない。まずメガロンってのが何なのかわからない。そしてカエサルは時を止めるという特別な力を持っているようなのだが、それがなぜなのか、それを使って何をしているのかもよくわからない。ていうかどうも普通の意味で「時間を止める」というのとはちょっと違うみたいなんだけど、じゃあどう違うんだと言われるとそれもわからない。

カエサル以外の登場人物たちはおおむね俗物なのでわかりやすいような気もするんだけど、見ているとちょくちょく行動原理が謎な人が現れる。カエサルの愛人で、カエサルの伯父である銀行家と結婚する女性とか。カエサルに接近するキケローの娘とか。

あとカエサルが亡き妻に取り憑かれているということも語られるんだけど、それもどうつながってくるのかわからない。最後に亡き妻に捧ぐみたいな献辞が出てくるのだがひょっとしてそれだけ?

そもそもカエサルという人物を肯定的に描いてるのかそうでないのかもよくわからない。テック大富豪が描く未来像に期待を込めている、みたいに見えないこともないんだよな。

といった感じで不可解なことばかり。なんでそうなるの?と思い続ける2時間半。
なのだが、とにかく全編「絵ぢから」が強くて、画面を観てるだけで飽きることがない。IMAXで観れたというのもあるのかもしれないが。ほんとに画面だけ観てると、そのイマジネーションには驚嘆する。これだけのものを自腹で作り上げたのだから、やはり大した人である。

ということで、嫌いじゃないんだけど困った映画だなというのが自分の感想だ。

あ、The Theの「Lonely Planet」が流れるところは、映画の内容とマッチしていてすごくよかったです。

映画『メガロポリス』公式サイト
『ゴッドファーザー』、『地獄の黙示録』など数々の傑作を生みだしてきた巨匠コッポラの最新作。現代社会への憂いと人類への愛、そして未来への希望を描いた、2025年最大の注目作であり映画史に名を残すことが運命づけられたコッポラの集大成。

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