この世ならざる者―『だれか、来る』三鷹SCOOL

Uncategorized

タイトルを聞いて想像したのは、「ゴドーが来ちゃう」みたいなことかな、ということだった。

佐々木敦さんが演劇の演出をするという話を最初に聞いたのは、たしか昨年末くらいだったと思う。「NOIZ NOIZ NOIZ」用の対談を収録したあとの雑談でそんな話が出たのだった。飴屋法水さんが出演するという話もその時点で聞いていたので、「飴屋さんを演出するってどんな感じなんだろう」と思ったことをよくおぼえている。
その後佐々木さんにお会いした際にも「そろそろ稽古が始まる」みたいな話も聞いており、予約が始まったところでかなり早めにチケットをおさえた。けっこう早めに埋まったようだ。
ということで、9/26(金)のソワレで観てきました。

だれか、来る | SCOOL
戯曲:ヨン・フォッセ 翻訳:河合純枝(白水社刊) 出演:飴屋法水 出演:伊東沙保 出演:矢野昌幸 演出:佐々木敦 演出補:宮崎玲奈(ムニ) 光:櫻内憧海 音:土屋光(SCOOL / HEADZ) 写真:三野新 衣装:清原惟 制作;土屋光(S...

家を買ったという男女(飴屋法水との伊東沙保)が並んで正面を向きながら会話するところから始まる。二人だけの家。しかし、そこにだれかが来る、だれかがいるという予感に襲われている。
実際に現れたのは、その家の売り主だという男(矢野昌幸)。祖母の住んでいた家なのだという。この家のことを教えてやると言いながら入り込んでくる。何をするというわけでもないのだが、何かが壊れていく……

まず役者が全員すごい。
台詞は意図的に緩慢かつ平坦な、でも完全な棒読みというわけでもないトーンで発される。
飴屋さんは終始、普段の喋り声とまったく違う嗄れたドスのきいた声。こんな声が出るんだとびっくりする。そして立ち姿が美しく、表情は崩さないまま涙を浮かべていく伊東。さらには前説的ににこやかにトイレの案内などをしていたのが一転してめちゃくちゃ不気味な矢野(むしろ前説の記憶があるから余計怖い)。

セットはシンプルで、白い壁に折りたたみ式の長椅子が一脚。時折机が出されることもある。照明は白一色で、強まったり弱まったり、パッと消えたりする。時折、場面転換の際にバックに海?みたいな映像が映し出される。微細なアンビエントノイズみたいな音楽がときおりかかる。
最後は二人が黙って見つめ合い、激しく光が点滅していく中でハーシュノイズが徐々に大きな音になっていく(注意書きとして「上演中に非常に眩しい光や大きな音の演出があります」とあるので、これはネタバレじゃないよね)。SCOOLには何度も行ったことがあるけど、「ここでこんなにでかい音が出せるのか」と思った。目や耳を塞いでいる人も散見された。
あとで佐々木さんが「FilamentからMerzbowへ」と言ってたけど、あれはどっちかというとオプトロンじゃないかな(目にも耳にも痛いので)。

全体として、高橋洋の近作を思い出した。高橋監督の『ザ・ミソジニー』とか『霊的ボルシェビキ』あたりの演劇に寄った映画。そのこの世ならざる、ただならぬものが映っている感じ。
黒沢清という声もあったそうだけど、まあそんな感じもある。演技も演出も抑えめなところ。

始まってすぐに「これはホラーなんだな」とわかった。演技なんかはどこまで演出によるものなのかはわからないし、会場や予算などの制限によるものもあるとは思うけど、ミニマルかつホラーということで、すごく佐々木さんらしい舞台だと思う。

正直、ところどころ寝たのだが、別につまらなかったわけではない。ていうかものすごく面白い。ゴダールだって寝るけど面白いしな!
そして深く考えずに楽日に近いチケットを取ってしまったのだが(なんとなくこういうのは後半に向けてクオリティが上がっていくものだという思い込みがあるので)、今となってはもう一回くらい観たかった。

台詞はほぼ戯曲どおりだけどト書きは全然違うということなので、戯曲も読んでみようと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました