ボリュームは小さいが企図は大きい―稲葉振一郎『市民社会論の再生 ポスト戦後日本の労働・教育研究』【119冊目】

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近代(ざっくり19世紀)→現代(ざっくり20世紀)→現代という段階的な時代区分の根っこにあるのはマルクス主義歴史観だが、マルクス主義自体が失効している現在において、その段階論も見直されつつある。
そのまとめ直しを、労働運動の研究者である東條由紀彦と教育学者である森重雄・佐々木輝雄という面々の仕事を通して探るというもので、著者自身の仕事としては『社会学入門』『「新自由主義」の妖怪』といった既刊を引き継ぐものだという(そっちも読んでおけばよかった)。

労働と市場の関係の変化。フーコーをはじめとするポストモダニズムにおける学校批判がもたらしたもの。学校と職業訓練等々、興味深いトピックが並んでいる。
そして時代区分のとらえ直しを通じて「市民社会」の維持の重要性を説き、それが困難となりつつある現在において何ができるのかを考えるというところにつながっていく。ページ数は250ページもないコンパクトな本だがそこに込められたものは壮大だし、情報量も多いのでちょっと一回読んだだけでは咀嚼しきれていない。ちょっと他の本をいくつか読んでからもどってきたい

市民社会論の再生 - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも

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