自我と他者―キム・チョヨプ『派遣者たち』【65冊目】

03 Books

「氾濫体」と呼ばれる菌類と、それが引き起こす「錯乱症」の脅威から逃れ、人類は地下で暮らしている未来。

主人公のテリンは地上に行ける「派遣者」を目指し訓練を受けているのだが、頭の中に誰かがいるような感じがする。どうも脳に入れた記憶補助装置「ニューロブリック」が干渉してきているようなのだ。テリンはそれに「ソール」と名をつける。
その後、地上に出たテリンが遭遇する氾濫体の世界が圧巻。
群生体である氾濫体には自我とか魂といった概念が理解できない。そんな生物との共生が可能なのか。果たして人類は氾濫体とどのような関係をもつべきなのか。
地上での経験やテリンたちの過去が明かされるに従い、だんだんと思弁的になってくる。自我、そして他者のとの共生みたいなことに関する思弁的SFという感じか。

現代韓国を代表するSF作家キム・チョヨプの長編。翻訳されている作品も多いが、ぼくが読んだのは短編集『わたしたちが光の速さで進めないなら』に続いて二冊目。韓国SFって良くも悪くも政治的寓話みたいなのが多いんだけど、本作はいい意味でオーソドックスなSF寄りなので、韓国SFに親しみのないSFファンにもお薦めできるんじゃないなかと思います。

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