日本有数の魔窟との苦闘の記録だが、みんな楽しそうで良い。
ミステリやSFなどの分野で活躍している評論家・アンソロジストの日下三蔵邸の蔵書整理記録。ブログ「古本屋ツアー・イン・ジャパン」で日記形式で書かれたものを加筆修正して書籍化したもので、日下三蔵著『断捨離風雲録』と同日に本の雑誌社より発売された。

カバーの写真、上段がビフォーで下段がアフターだと思うのだが、素人には「アフター」には見えないんじゃなかろうか。
西荻窪の古書店「盛林堂書房」の手伝いとして著者が同行。ギャラの代わりに昼食に寿司、夕食に焼き肉をごちそうになり、トリプっている本をわけてもらうということになっている。
集合→日下邸へ→出迎え→作業→発掘(「なんでこんなものが!」とか「ここにあったのか!」といった反応)→感動(「床が見える!」「トイレに入れる!」→労い本というような流れが反復され、ミニマル・ミュージックを聴いているような気分になってくる
寝室の本が崩れてくるのが怖くてずっとうつ伏せで寝ていたとか、本の山のなかから何年かぶりで冷蔵庫が発掘された。その中には……といったホラーなエピソードも登場。
いろいろと貴重な本が発掘されているようなのだが、疎いジャンルなのでその凄さがわからない(すごいんだろうなというのはわかる)
手伝いに行かない間にも独力で片付けは続けられており、だんだん片付いていく過程が追体験できる。
いちばんヤバいと思ったのは、労い品については3冊持ってたら一冊はあげてもいいというルールになっているようなのだが、持ってるはずだが見つからないというようなケースが発生することもある。次回までに見つけておきますよ……という形で一度は落ち着いたのだが、打ち上げの焼肉屋に向かう途中でその本を注文、「これであげられます」というのである。意味がわからないと思うが、ぼくにもわからない。
あとがきでは、自分の本は片付けてないというあるあるなオチがつく。
2017年2月から2024年12月まで書かれているが、実際にはそれより前からスタートしており、10年ほどかかったという長期プロジェクトである。日下邸の蔵書整理については「本の雑誌」の連載で断片的に見ていたのだが、ついにこうして本になるところまで来たかと思うと感慨深い。『断捨離風雲録』も合わせて読みたい。
コメント