酔いどれアフロ・マジックリアリズムとでも言うべきか。あとブコウスキー感が微妙にあるかもしれない。

国書刊行会から始まった「アフリカ文学の愉楽」という叢書の第一弾。
コンゴ共和国の下町にあるバー「ツケ払いお断り」(なんつー店名)が主な舞台。語り手の「割れたグラス」が店主の「頑固なカタツムリ」からノートを渡され、バーの客たちが語る話を書き留めていく。
オムツを履いた「パンパース男」は妻との不和の末に小児性愛者の濡れ衣を着せられて刑務所へ。そこで掘られまくって肛門がガバガバになっちゃったからオムツが必要になったという。
長時間の放尿が自慢の「蛇口女」は、自分より長く放尿できたらやらせてやると言って男たちに賭けをもちかけてカモにしている。ある日その賭けに乗ったよそ者。いざ勝負となって男が取り出した自分のイチモツはめちゃくちゃ小さくて、まるで素粒子。ところがその素粒子から出る尿はとどまるところを知らない。
等々、出てくる人物たちの名前がいちいちおもしろく、エピソードもめちゃくちゃである。それでいて文章にはピリオドがなくて延々と「、」で続いていく(パートが分かれるところで改ページされる)。さらにものすごい数の古今東西の文学のタイトルが言及されていて、脚注がたくさんついてるんだけど、たぶん訳者にも拾えてないものもたくさんあるという。
こんな変な本だが著者は現代アフリカ文学を代表する作家であり、コレージュ・ド・フランスの招聘教授やら国際ブッカー賞の選考委員やらと国際的にも重要な作家として認められているのだという。世界は広いな。
余談になるかもしれないがこの本、造本もちょっと変わっているというか凝っている。判型が46判変形ということで、幅がちょっと狭い。天アンカット。あと、図書館の本なのでカバーをはずして確認できなかったんだけど、たぶん糸でかがっている。
先日の「オーストリア綺想小説コレクション」もたいがい変だったが、第一弾から相当飛ばしているこの叢書も今後も目が離せない(コンゴだけに)。

コメント