タイトル通り、19世紀後半の主に英米におけるスピリチュアリズムの一大ムーヴメントについて詳しく経緯を辿った本である。
先日、森本在臣さんと本を紹介し合うYouTube動画でちらっと紹介した一冊。あの時点では読み始めたところだったのだが、ようやく読み終えました。

スピリチュアリズムのはじまりをメスメリズムとスウェーデンボルグにおき、その後登場するさまざまなミディアムたちによる交霊会、そしてそれを検証した学者たちなどが紹介される。
そもそも当初のスピリチュアリズムは科学とまったく縁がなかったわけではなく、電気やら磁気やらと言った当時の先端的な科学の概念と使って心霊現象を説明することにも熱心であった。
また、その流れでテレパシーなどの概念も出てくるのだが、これは交霊会で起こる現象を霊に起因するものではなく、未知の物理現象と解釈しようという流派である。これは霊の存在を信じる一派と袂を分かつことになっていく。
面白いのは著者の伊泉龍一はスピリチュアルなことを信じていないとまえがきの段階で言明していること。ただしと学会みたいに揚げ足取りに主眼をおいているわけでもなく、あくまで中立的に当時の報道や論文などを検証している。なので、ミディアムたちのトリックを暴いたという主張にも根拠の弱いところは指摘しているし、逆にスピリチュアリズム派によるエクストリーム擁護みたいなのにもしっかりとツッコミを入れている。
けっきょく本を書き終えても基本的に「信じていない」というのは変わらなかったそうだが、その中でも唯一、パイパー夫人というミディアムだけはちょっと別格というか、「保留」としているのが興味深いところでもある。
あと、最後のほうで最近話題の「山羊の睾丸」の注射の話がでてきたので笑いました。
なお、著者は以前にタロットカードについての大著も刊行しているが、やはり占いは信じていないという。それでもタロットの専門家として講演やカルチャースクールに呼ばれる機会は多いのだが、受講生から「先生、信じてないでしょ」とバレバレだというのも面白かった。
また翻訳者としても、ぼくの周囲でも話題になったロックとオカルトにまつわる『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ -いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』など、カウンターカルチャーに関する面白そうな本をいろいろ訳されている。訳書にも注目したい。
あと、デザインは松田行正がやっていてさすがに美しいのだが、小口印刷はしてないんですね。

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