積ん読を崩す機会をくれる――『ホルヘ・ルイス・ボルヘス 無人称の文学空間をめざして』【180冊目】

03 Books

水声社が今年スタートした「知の革命家たち」というシリーズがある。
学者や芸術家、作家などとだいたい150ページくらいのコンパクトな本で紹介するもので、早くも20冊以上刊行されているという異常なペースも含めて話題になっている。というか、スタート当初は話題になってたと思うんだけど、シリーズ立ち上げ自体が話題になったはいいけど実際どのくらい読まれているのだろうか。
ぼくは今回読んだボルヘスで6冊目。多いのか少ないのかはわからない。

シリーズ全体で踏襲されている構成として、はじめにざっくりと伝記的なことがまとめられて、第二部でその仕事・作品・業績が紹介されるという流れになっている。ボルヘスも同様で、最初にその生い立ちから生涯が紹介され、そのあとはゆるやかに時系列をたどりながらボルヘスの仕事をいくつかの切り口で解説するという形式だ。

軍人の家系であること、そして父方の祖父が英国出身で早くから英語に親しんでいたことがボルヘスに大きな影響を与えているという。
アルゼンチン性と普遍性というテーマ、球体などのいわゆるボルヘスらしいモチーフ、生涯長編を書かなかったこと、文学作品が新たな文学作品を産むという文学観と独自の文学観、そして図書館員として万巻の書物に囲まれて生涯を過ごした書斎派の世捨て人みたいなボルヘスが実際には極めて積極的に政治にコミットしていたこと、後に起こるラテンアメリカ文学ブームには冷淡だったこと、などが綴られている。

ということで、ボルヘスは我が家には3~4冊積ん読があるのでこれを機にいよいよ読んでみるかもしれない。あ、でもこのシリーズで読んだ『クロード・シモン』や『ジャン=ポール・サルトル』についてもそれぞれ積ん読があるので、そっちも読みたい。積ん読を崩す機会になる本はいい本だ。

このシリーズはだいたい完全な初心者向けの入門書よりはちょっとハードというか、初心者以上中級者未満くらいに向けて作られている印象があって、入門書とはいっても少しくらいは歯ごたえがあるものを読みたいというタイプの読者にはおすすめだと思う。

なお、水声社なのでアマゾンでは売ってません

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