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03 Books

自我と他者―キム・チョヨプ『派遣者たち』【65冊目】

「氾濫体」と呼ばれる菌類と、それが引き起こす「錯乱症」の脅威から逃れ、人類は地下で暮らしている未来。 主人公のテリンは地上に行ける「派遣者」を目指し訓練を受けているのだが、頭の中に誰かがいるような感じがする。どうも脳に入れた記憶補助装置「ニ...
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文体と内容―二葉亭四迷『浮雲』【64冊目】

長谷川二葉亭は日本近代文学を作った人物である。 『浮雲』といえば「言文一致体」を初めて導入した小説だというのが文学史における定説だ。実際に読んでみると、普通に読めるので驚く。もともと落語の速記を参考にしたと言われてるだけにリーダビリティは高...
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ショウケースとして最適かも―『現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号』【63冊目】

世は短歌ブーム。文学フリマなんかでも最近は一番の人気ジャンルのひとつとなっている。思えば十数年前に、高橋源一郎の書評集みたいな本のなかで現代短歌が熱いみたいなのがあって、アンソロジーをいくつか読んだりしたものなんだが、その後継続的にフォロー...
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編集スキルを上げたいと改めて思った―『ユリイカ2024年11月号 特集=松岡正剛』【62冊目】

昨年秋に亡くなり、けっこうすぐに出た追悼特集号。 いろんな人が寄稿しているが、やはり面白いのは工作舎/「遊」の時代に深く関わったひとたちである。工作舎がどのように成立し、「遊」がどのように作られたのか。ということで鼎談「工作舎の編集幼年期」...
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読書メモは楽しい―五藤隆介『アトミック・リーディング』【61冊目】

最近特に意識的に読書メモをつけるようになった。以前は気が向いたら紙のノートにメモしていたのだが、最近は読書メモをつける流れを見直しており、以前よりもマメに記録をつけている。そんな興味から読んでみたKindle本がこちら。 「読んだ本について...
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これから読む人は新装版を――『関西ハードコア』【60冊目】

FORWARD/DEATH SIDEのISHIYAさんが日本のハードコアに関する貴重な本を次々と上梓されているが、その皮切りになったのが本書である。刊行当時、初版は早々に売り切れて重版時には増補記事が入り、さらに最近は別な版元からCD付きの...
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読書の快楽の極み―『4321』【59冊目】

オースターってこんなに面白かったっけ! というくらいに最近ハマっていたのが昨年秋に刊行されたポール・オースターの『4321』である。信頼の柴田元幸訳。 何を言ってもネタバレになるタイプの小説なのでどう説明したらいいんだろうか……。ニュージャ...
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先生は大変だ―『現代思想2021年4月号 特集=教育の分岐点』【58冊目】

図書館で蔵書されている『現代思想』のバックナンバーを全部読む試み、今回は2021年4月号。ちょうど4年前の号だ。 2021年、当時の萩生田文科相のときに問題になった受験改革を皮切りに、語学教育の会話重視志向や国語教育(「論理国語」と「文学国...
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実験映画は特にパンフがありがたい―『ベット・ゴードン エンプティ・ニューヨーク』【57冊目】

中短編&長編併せて3本が上映中の早稲田松竹で購入したパンフ。監督自身によるインタビューがまずは興味深い。欲をいえば音楽シーンとのかかわりなんかももうちょっと知りたかったけど。 作品におけるフェミニズム理論をわかりやすく説明してくれるコラムの...
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ポリティカル近未来サスペンスの傑作!―王城夕紀『ノマディアが残された』【56冊目】

国家が成り立たなくなって「動民」(≒)問題がシリアスになっている。「ガーデン」と言われる単位の共同体が各地で林立し独立的な立場を主張している。一方で感染症も問題になっている、というそんな近未来。 主人公は日本の外務省の秘密部署「複製課(レプ...