『名もなき者』と表裏一体みたいな映画だ。
ホアキン・フェニックスがジョニー・キャッシュを演じる音楽伝記映画。監督は『名もなき者』のジェイムズ・マンゴールド。

少年時代から音楽が好きだったものの、父は音楽の価値をまったく認めてくれないなか、仲のよかった兄が事故死してしまう。
軍隊生活を経て結婚しセールスマンになったキャッシュ。音楽の夢は捨てきれずバンド活動を続けるも、奥さんにもまったく認めてもらえない。
そんななか、町中にレコーディング・スタジオがあるのを発見し、オーディションを受けることにする。これがチェス・レコーズのサム・フィリップスの店だったのが彼の運命を変える。
家族が熱心なクリスチャンだったこともあってとりあえずゴスペルを歌ってみせるも、そんなものは聞き飽きたと一蹴、お前の全身全霊を込めた歌を聞かせろと言われたキャッシュは軍隊時代に書いたオリジナル「フォルサム・プリズン・ブルース」を歌い始める。メンバーも初耳なので手探りながらもだんだん盛り上がっていく演奏。
デビューが決まりツアーに出たキャッシュ。これがまたジェリー・リー・ルイスにジョニー・キャッシュにロイ・オービソンにエルヴィスなんて豪華なツアーなんだな。そのツアーメンバーに、キャッシュが子供の頃から愛聴していたカーター・ファミリーのジューン・カーターもいたことが運命の出会いとなる。
まだ世間では離婚についての風当たりが強かった時代。ジューンは離婚経験があり、また自分は歌が上手くないと思っている(だからコンサートでは笑いをとってなんとか誤魔化している)。そんな彼女を励ますキャッシュ。
家庭にもどれば稼ぎがよくなったことは歓迎されながらも、「ツアーの話は聞きたくない。普通の話をして」とか言われてしまい「なんだよ普通って」となっているキャッシュはどんどんジューンに惹かれていく。
やがてドラッグにはまって妻子が出ていってしまう一方、ジューンはキャッシュに対して反発しながらも惹かれていく。
ちなみにジューン・カーターを演じるのはリース・ウィザースプーンで、なんとなく『名もなき者』のエル・ファニングに通じる顔な気がする。こういう顔好きなのかな。

ちょいちょいディランに言及するシーンがあり、主人公を聖人みたいには描かないところも含めて、『名もなき者』と共通するところが非常に多い。
まず役者が全部自分で歌うというところからして共通している。ストーリーと歌詞をリンクさせる手法も、ライブシーンがいいのも共通。ていうか撮り方がだいたい同じなんだな
挙句の果てにキャッシュがジューンとデュエットでディランの「It Ain’t Me Babe」を妻の前で歌うなんてシーンもあったりして、「これこないだ観た!」と思った。
有名なコンサートの場面をクライマックスに持ってくるところも同じだし、女性二人との三角関係をストーリーの主軸に据えつつ、「父」との相克(ディランとピート・シーガー)をもうひとつの軸にしているところも同じ。
違うところは、『名もなき者』はディランの内面がほとんど描かれないのに対して本作ではキャッシュの弱い面を掘り下げることに力を入れているところかな。
そもそも『名もなき者』を観た人はみんな「ジョニー・キャッシュ好きすぎだろ」と思うはずなので、こちらも併せて観ることをおすすめします。

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