昨年春の文学フリマで買った批評同人誌。ちょっとどういう経緯の人たちが作ったものだったのかは覚えてない(ほんの一年前なのに……)。

「総特集アメリカ」と、なかなか大きく出た。その意気やよし。まだバイデン政権だったころなんだな。
目次は以下の通り。
「総特集アメリカ:Born in the USA (As a Child)」
対談 池澤春菜?小浜徹也(聞き手=さやわか)
・テックとスピリチュアリズム/ 強いこととは幼いこと
エッセイ あいけ
・資料館と批評の影
論考 河野真太郎
・『ミズ ・ マーベ ル』、またはイギリスの罪とアメリカの贖罪
論考 大谷能生
・前の前の世紀の変わり目から、二〇年たって。
レビュー 水上文
・“理想の延命”としての多様性――映画『ウィッシュ』評
論考 三牧聖子
・停戦 と平和のために声をあげるユダヤ人―『関心領域(映画) The Zone of Interest 』監督ジョナサン・グレイザー
エッセイ 柴山望
・ニューヨークで見た特攻隊
論考 葛西祝
・mod TALE ビデオゲームの改造に見られる、自由と管理にまつわるおとぎ話
以下、ざっと印象に残ったものについて。
巻頭、池澤春菜と東京創元社でSFの編集をしている小浜徹也の対談ではアメリカの「若さ」と未熟であるがゆえの強さみたいな話がされる。そんな中で最近読んだスピリチュアリズムの話が絡んでくるところが面白かった。
「資料館と批評の影」というエッセイでは都内の戦争関連の資料館を訪れた際の感想が綴られる。「平和展示祈念資料館」(新宿)と「東京大空襲・戦災資料センター」(江東区)の2館。公営と私営であることから来る違い、そしてそこにおける「アメリカ」の存在というか不在。
大谷能生は19世紀から20世紀にかけてをジェームズ・キャグニー、デューク・エリントン、そしてウラジーミル・ナボコフで描き出す素描。
『関心領域』については正直なところいまのユダヤ人に被害者ぶられてもな、という気持ちがあったのだが、ジョナサン・グレイザーのしっかりした対応について三牧聖子の論考で初めて知って感心した。もちろんのことながらアメリカのユダヤ人たちも一枚岩ではない。
あと、葛西祝の論考で語られるゲームに関する自由の意識の差という観点は、日頃ゲームにうといので興味深く読んだ。
Boothを見たところ、今年の春の文学フリマ東京で第2号が刊行されたようである。引き続きがんばってください。

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