ロバート・エガース監督による『ノスフェラトゥ』のリメイクを観てきた。
感想は別途書いたり喋ったりするのでそちらをご覧いただければとして、自分が『ノスフェラトゥ』という1922年の古典を知ったきっかけとなったのは赤川次郎だった。
小学校4年生くらいだったと思うんだけど「三毛猫ホームズ」シリーズやら「吸血鬼はお年ごろ」シリーズやらを愛読しており、その中で「ノスフェラトゥ」に言及、吸血鬼映画の最高峰とはこれなのだとしっかり植え付けられたのだった。

で、リメイクも観ることだし、赤川次郎がどんなことを書いていたかを確認しようかなと思ってこの『三毛猫ホームズの怪奇館』を手に取った次第。1982年にカッパノベルズで刊行され、現在は角川文庫になっている。当時はカッパノベルズで読んだが今回は図書館で角川文庫版を借りた。奥付を見たら「第七十六版」とか書いてあるのでびっくりした。平成二十四年時点なので、もっと版を重ねてるのかもしれない。
ことほどさように三毛猫ホームズシリーズというのは少なくともぼくの世代では説明不要の人気作品だったのだけど、最近はどうなんだろうな。刑事の片山とその妹である晴美、そして飼い猫の「ホームズ」がさまざまな事件を解決していくというミステリのシリーズである。
ガス爆発の現場で女子高生の死体が見つかり、彼女は妊娠していたことがわかる。
また、片山にラブレターを渡してきた女子高生が刺され、その後病院を抜け出して死亡。彼女も妊娠していた。彼女たちと、高校の怪奇クラブの関連が浮かび上がり――というもの。
この怪奇クラブというのがクラシックホラーの愛好家たちなのだ。各章に「オペラの怪人の章」「ジキル博士とハイド氏の章」「フランケンシュタインの章」「ノスフェラチュの章」という章題がつけられている(「チュ」なんですね)。いずれも20~30年代の古典映画で、各章のトビラに写真も入り、それぞれの映画についての言及もありつつ、それが事件にも関わってくるというなかなか凝った趣向だ。
『ノスフェラトゥ』についても、クライマックスシーンの描写とともに怪奇クラブの面々による「今見たって芸術だよ」「ベラ・ルゴシもクリストファー・リーも、これに比べるとアニメの主人公みたいだな」といったコメントが述べられている。そうそう、ぼくも当時これを読んですっかり真に受けたのだった(いまはルゴシもリーも好きです)。
そしてなにがすごいって怪奇クラブの面々は海外の映画会社に連絡を取り、8ミリフィルムを取り寄せて上映会を開いているのである。家庭用ビデオがない頃の映画マニアたちの記録としても興味深い。そんな普通に貸してもらえるものだったのかね。
ミステリとしてはちょっと微妙なところもあるのだが、楽しい一冊です。
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