前に同じ『現代思想』の教育特集を読んだ際には、コロナ禍だったこともあって教育現場や教師の状況、それに受験改革に関するトピックが中心だった。
今回の教育特集では、生徒・学生の状況を論じたものが中心になっているようだ。

巻頭の児美川孝一郎+本田由紀対談では児美川の著書『新自由主義教育の40年: 「生き方コントロール」の未来形』を起点に、教育現場における「新自由主義」の影響について語られる。
なお、近年はなんでもかんでも新自由主義といっておけばなにか批判したような気になっているという批判もあるが、本対談ではそのあたりも踏まえられており、二人とのこの用語については慎重な姿勢を示しているので念の為。
だれもがエリートを目指すのではなく、「ほどほどの生活」を望む生徒に応えられるような教育というのが必要なのではないか。みたいな話。
ほか、児童の貧困や奨学金/学生のバイト漬け問題。学校給食に求められる多様性、といった内容が中心。
ちょっと変わり種的だったのが特集の最後に掲載された荒井悠介による「イベサー」出身者たちのその後を追ったもの。イベサーでイリーガル手前くらいのグレーな仕事を経験した若者たちが、そこで得た経験をどのように自身の「資本」としてビジネスを営んでいったのか、ブルデューを援用して描く、というもの。こういう本ではあんまり出てこない話で面白かった。
コメント