とにかく『エミリア・ペレス』が不可解だったのだ。
あんまり謎なのでジャック・オーディアールの過去作を観てみようと思い、代表作らしき『預言者』と『ディーパンの闘い』を鑑賞。続けて『エミリア・ペレス』前の最新作であるところの今作を観たという次第。

パリ13区というのは高層マンションの立ち並ぶ再開発地域なのだそうだ。たしかにパリを舞台にした映画で思い浮かぶ町並みよりもだいぶモダンな印象である。
わりと奔放な感じの中国系女子エミリーのところに黒人の高校教師カミーユがルームメイト希望としてやってくるところから始まる。二人は速攻でセックスして一緒に暮らし始めるのだが、恋人になることはない。やがてカミーユが彼女を家に呼んだことから二人の関係はこじれ、カミーユは出ていくことになる。
ここまでモノクロなのだが突然カラーになってエロビデオチャットの画面が入り、映画は後半へ。
またモノクロにもどり、ソルボンヌ大学に復学した女学生ノラが希望に満ちた学校生活を始める。ところがある晩、ブロンドのウィッグをかぶってクラブに出かけたところ、その姿がビデオチャットの女優アンバー・スウィートと似ていたことから本人だと間違われ、やがて学内中の噂にされてしまう。
ノラは大学にいられなくなって不動産屋で働き始めるのだが、そこの店長がカミーユ(学校を辞めて一時的に知り合いの店を預かっているのである)で、カミーユがノラに惹かれていく一方、ノラはアンバー・スウィートと交流を始める。

モノクロのオシャレな映像で、わりとばんばんセックスするところも含めて、なんかこんなフランス映画らしいフランス映画って久々に観たなという印象。なんならパロディとしてやってるじゃないかという気すらする。違うのは有色人種が多いところ。そこは明らかに意図的というか、いかにもフランス映画なストーリーにマイノリティを持ち込むということ自体が狙いなんだろう。
『預言者』『ディーパン』とあまりに作風が違う。そこは脚本でかかわっているセリーヌ・シアマの要素もあるのだろう。『エミリア・ペレス』もシアマが脚本書けばよかったのにと言ってるひとが散見されたのだが、その気持はよくわかる。というか、これの次が『エミリア・ペレス』だっていうのはなんとなくわからんでもない。
たぶんジャンルに異物を持ち込んで脱臼させるようなことに興味のある監督なんだろうなというのはなんとなくわかってきた気がする。

コメント